がとーしょこらの技術録(旧)

記録や技術的な記事を書いていきます

Nostosをプレイして

はじめに

本記事はVRオープンワールドRPG「Nostos」をプレイしてみて感じたことを開発視点で述べています。

あくまで忘れないうちの記録用のような立ち位置です。

特にVRゲームという点に注目してVRにおけるデザイン的な部分が多い気がします。

単にプレイした感想の記事ではなく, メタ的な要素も含まれており世界観を壊しかねないので 不安な方は記事を読まないことをおすすめします。

簡単な感想はレビューに書いたのでそちらをどうぞ https://steamcommunity.com/profiles/76561198372147683/recommended/943150/

Nostosとは

NetEase Gamesから発売されたVRオープンワールドPRGです。

狩りや採掘で食料や武器を集めながらファンタジーな世界で過ごしていきます。 store.steampowered.com

プレイして感じたこと

一通りプレイして感じたことを羅列していきます。

あくまで私が感じた所感であり, 技術的にも心理学的にも根拠のないことがほとんどなのであらかじめご了承ください。

下記の内容は2019年12月11日のリリースバージョンをプレイしたものなのでそれ以降のバージョンでは異なる可能性があります。

統一された世界観はすごく良い

ファンタジー的な世界観で全体的にトゥーン調に仕上がっていて世界としてのまとまりが良かった。 また, 原始的な生活にもかかわらず, 近未来的なかっこいいUIが使われていたが, それは物語で保管されており違和感なく世界観を損なわなかった。 身体的なものを含め様々な矛盾は没入感を損ねる要因になりかねないので, 没入感を維持or高める要因として世界観の統一は重要だと思った。

頭を振ると視界が一瞬暗くなるのは酔い低減になる?

高速に頭を横に振ったときに一瞬視界が暗くなっていた。 これは描画更新時の負荷による動きと視界のラグに対する対策として酔いの低減に関与しそうだと思った。 その反面, 明るいところからいきなり暗くなるという現象は視界的にあまり良くないので逆に酔いの発生原因になりかねないと思った。

車の窓から見ている感は良かった

移動手段の1つである車に乗り込んで移動している際にフロントガラス部分などによって視界の変化量が多い部分が少なくなっていた。 視界の広範囲の情報が変化すると強い酔いに繋がると感じたので視界を絞る手段として有効に感じた。

トリガー長押しによる選択は良かった

採取や装備作成時などにコントローラで触れながらViveコントローラのトリガーを押すUIが用いられていた。 その際にトリガーを一瞬ではなく一定時間押すことで各項目を選択できた。 これはコントローラのトリガーで様々な操作が要求されるVRにおいては語選択を防止するために有効だと感じた。

視界上にHPバーなどがあるのは良さそう

本ゲームでは左上に常にHPバーや状態を示すアイコンが表示されていた。 VRにおいて視界に固定点を置くことは酔いの低減に効果があるといわれている。 よってHPバーを常に視界上においておくことも酔いを低減させる効果があると思われる。

UIを出す手の角度の調整は必要そう

本ゲームでは手の甲部分にメニューUIが存在した。 これは普段は非表示になっており, 手の甲を見るように上に向けると出現する。 しかし, 必要なときになかなか出現することがなく, 回転の閾値は微調整が必要そうだと感じた。

移動時の加速はあまり良くなさそう

止まっているときから移動する際に指数関数的に速度が上がっていた。 これは現実の動きや移動時の視界の見えと大きく異なっているので酔いを起こす要因に感じた。

高速移動時の集中線はあまり良くなさそう

移動時の集中線のようなエフェクトはベクション*1として知覚されそう。 止まってプレイしているとさらに身体運動との矛盾が発生するので酔いの原因になるかもしれない。 ただ過度な集中線がダメであり, 本ゲームで使われている程度のものであれば大丈夫そう。 走っている感は出したいから音を使うのは良さそうという意見があった(良さそう)

頭を動かすと同期して視界が変わってほしい

タイトルやワールドに入った際のロード中に画面が固まる。 様々な処理が動いているので重くなるのは仕方がないが, 頭の動きに対して視界が全く変わらないのは不安感を感じた。 VRゲームではロード時間を長くしてでも身体運動と同期した視界(または違和感がないように)を確保するべきだと思った。 また, 別途ロード時間を暇にさせない工夫が必要。

1人称視点のムービーは良くない

ストーリーを進めているときにアニメーションでキャラが動いている頭の位置に3DoFで1人称な視点へと切り替わった。 視点だけ独立しており, 腕や体の動きは用意されたアニメーションによって実行されていたため, 没入感の低下が懸念された。 また, 視線も映像に合わせて強制的に移動させられたので酔いにもつながりそうだと感じた。 さらに, 映像によってはプレイアブルなキャラクター以外の1人称視点で見せられることがあった。 攻撃されているモンスターなどの1人称視点になったこともあったが, 物語的に意味もなく視点切り替えをするのは世界への没入に関してあまり良くないと感じた。

乗り物系には十分な考慮が必要

移動手段としてバイクや車が登場した。冒険する地形として凹凸が多い地形であり, 崖も多く存在した。 移動時の縦揺れは多く, 崖から落ちた際には1回転すらした。 さらに徒歩より高速な移動をするため, 移動時の視界更新の処理が重くラグがすごかった。 これらですごく酔いを感じたので過剰演出はVRにおいては良くないと思った。

移動するときに視線方向に移動はやめたほうがいいかも

コントローラの前を押すと前方向に移動するが, 正確には視線方向に動いていた。 本ゲームのような膨大なワールドにおいては横を見ながら前方向に移動したいといったことも出てくると思うので移動方法も検討が必要だと思った。

武器の脱着場所は考慮しないといけない

武器は腰あたりにあるところでコントローラのトリガーを押すことで持ったり離したりができる。 腰に近ければ近いほど, 真下を見て脱着部分を目視する必要があり, 高速な脱着は難しい。 現実では触覚などの視覚以外の情報で脱着可能だと思うのでバイブレーションを利用するなどの方法があると思った。 本ゲームでも着脱部分に触れたときに微かに振動したがもっと大げさでも良いと思った。

ボイスチャットの仕様に対して意味を持たせたほうがいい

本ゲームはボイスチャット機能がついているが, ワールドのどこにいても他人の声が聞こえるようになっている。 オープンワールドなゲームにおいては有効に思えるが, VRにおいては現実に似せて自然にしたほうがよいとされるのでデフォルトとしては発声されるプレイヤーの位置から声が発せらえており, 距離減衰が備わっているほうがいいだろう。 本仕様のようにボイスチャットを使うのであれば無線機器などを使った音声通信でやりとりしているなどのその仕様になっている意味を持たせて実装したほうがいいと感じた。

バーチャルな手と実際の手は位置を正確にあわせたほうがいい

本ゲームではコントローラの位置にあわせてアバターの手のモデルがバーチャル空間上に表示されていた。 しかし, Viveコントローラ使用時に座った場合, バーチャルな手の位置が実際の手と比べて前方向に移動してしまうことや 聞いた話ではOculusコントローラの場合は実際の手とバーチャルな手の向きが一致していないことがあった。 手は道具を使用するなどで最もよく見る身体部位である。よってこれに不一致が生じていれば没入感を大きく低下させる可能性があるため, 違和感がないように一致させる必要があるだろう。

*1:映像を見ることで自分は動いていないのに動いているように感じること。視覚誘導性自己運動感覚